鋼板|スケールの斑紋に隠れた線状疵と打痕を、形で見分ける
表面を黒い斑紋(付着したスケールや変色)が広く覆った鋼板を、TR-300 で撮像しました。お客様からご提供いただいたサンプル 1 枚です。あらかじめご指摘いただいていた線状の疵 3 箇所と打痕 2 箇所が、通常の画像(LIVE)と、形だけを取り出した画像(3D Surface)でそれぞれどう見えるかを比べました。
数値はすべて、掲載用に明るさを整える前の原データで測ったものです。
色ムラは、形の画像には写らない

LIVE でいちばん目立つのは、疵ではなく黒い斑紋です。ところが 3D Surface では、斑紋は跡形もなく消えます。疵の位置を示すためにインクで描かれた矢印も、同じように消えています。
斑紋の部分ときれいな部分の明暗差は、LIVE の 66.4% に対して、3D Surface では 0.2% でした。斑紋は色が変わっているだけで、凹凸を伴っていないということです。
色の違いで疵を探す検査では、この斑紋が誤検出の元になります。形を見る画像には、そもそも斑紋が写りません。
浅い擦り疵が、約 12 倍の振幅で現れる

① は、2 本が平行して走る浅い擦り疵です。LIVE では背景に対する振幅がわずか 1.7% で、斑紋の陰に埋もれてほとんど見分けられません。3D Surface では 21.3%(約 12 倍)になり、2 本が別々の線であることや、先へ行くほど浅くなっていく様子まで読み取れます。
打痕は、色としては現れない
打痕(④⑤)は、広い範囲にわたるなだらかな凹みです。色や明るさがほとんど変わらないため、LIVE では背景の揺らぎに埋もれてしまいます(SNR 2.6 / 2.9)。3D Surface では SNR 6.7 / 7.0 となり、背景からはっきり分かれました。
凹みがなだらかなので、3D Surface を眺めても目立つ姿ではありません。それでも SNR は LIVE の 2 倍以上あり、信号としては背景からはっきり分かれています。
LIVE のほうがよく見える疵もある

② は、表面の黒い被膜が削れて地金が露出したと考えられる疵です。LIVE では白く強く光り(振幅 66.3%)、3D Surface(28.1%)よりはっきり見えます。一方で、疵を線として途切れずに追える割合は、3D Surface が 74%、LIVE が 65% と逆転しました。
③ の縦方向の疵も、板面のきれいな場所にあるため LIVE で追うことができ、SNR では LIVE が上回りました。鋼板の素地にある細かな粒状の起伏が、3D Surface の側ではノイズになるためです。
つまり、どちらか一方の画像だけで足りるわけではありません。TR-300 では、LIVE と 3D Surface が 1 回の撮像から、画素単位で位置の揃った状態で得られます。色で見える疵と、形でしか見えない疵を、同じ撮像で両方とも捉えられます。
5 箇所と斑紋の測定結果
| 対象 | 指標 | LIVE | 3D Surface |
|---|---|---|---|
| ① 斜め方向の線状疵(二条) | 振幅 / SNR | 1.7% / 2.2 | 21.3% / 6.8 |
| ② 横方向の線状疵(地金露出) | 振幅 / SNR | 66.3% / 14.0 | 28.1% / 11.5 |
| ③ 縦方向の線状疵 | 振幅 / SNR | 8.5% / 8.3 | 27.1% / 5.9 |
| ④ 打痕(小) | SNR | 2.6 | 6.7 |
| ⑤ 打痕(大) | SNR | 2.9 | 7.0 |
| 黒い斑紋と清浄部の明暗差 | 明暗差(小さいほど斑紋が写らない) | 66.4% | 0.2% |
太字は、各項目で優れていた側です。
- 振幅:疵の信号の大きさを、背景の明るさに対する割合で表したもの。
- SNR:疵の信号が、周囲の背景の揺らぎの何倍あるか。大きいほど背景からはっきり分かれています。
撮像の条件
- 装置:TR-300(FORESIGHT STEREO を搭載したラインスキャン構成・4 方向照明)
- 対象:鋼板 1 枚(お客様ご提供のサンプル)
- 評価した箇所:お客様が事前にご指摘の線状疵 3 箇所・打痕 2 箇所
- 掲載画像:LIVE は原データが暗いため、全図に同じ明るさ補正を 1 回だけ掛けています(図ごとに変えていません)。3D Surface は無加工です。
- 寸法:今回は寸法の校正を行っていないため、疵の実寸は記載していません。
斑紋や変色の多い板材でお困りではありませんか
色ムラに紛れた疵の見逃しや、色ムラを疵と取り違える誤検出でお困りでしたら、お手持ちのサンプルでの撮像をご相談ください。

