Materials
同じ装置でも、
対象物で見え方は変わる。
「うちの部品は見えますか」── 商談で必ず出る質問です。 答えを決めるのは装置ではなく、対象物の表面がどう光を返すかです。
真っ黒な樹脂、光るめっき面、透明な被膜、細かい凹凸。 当社が実際に撮った 6 種類で、写真(Live)と面の向き(Surface Normal)が どう違うのかを並べました。すべて実測です。
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千円札。写真では色と模様が主役ですが、面の向きでは色が消えて、凹版印刷の凹凸だけが残ります。 測っているものが違う、というのはこういうことです。
Experiment 01
写真の線は平ら。
向きの線には構造がある。
対象物を選ぶと、同じ場所の 1 行を切って、 明るさと面の向きの傾きを並べて描きます。走査線は上下に動かせます。
鋼板やゴムのように写真では一様に見えるものほど、下の 2 本の線の性格が違います。 写真の線は平らなまま、向きの線だけが構造を持ちます。
192 行目
Live(写真) σ 4.6
Surface Normal(面の向き) σ 0.196
画像の上をドラッグしても走査線が動きます。
σ(シグマ)は、ばらつきの大きさ。
その 1 行の中で値がどれだけ散らばっているかです。明るさの σ が小さいほど、 写真としては「のっぺり」しています。向きの σ が大きいほど、面が傾いている場所が多い。
鋼板を選ぶと、この 2 つが正反対になります。写真では平らに見えるのに、 面の向きでは圧延の筋と押し疵がはっきり出ます。
画像は加工していません。
6 種類とも当社が撮った実測の Live と Surface Normal を、中央を正方形に切って 384 画素に縮めただけです。コントラストも色も触っていません。
※ グラフの 2 本は、その画像からその場で計算しています。 明るさは Live のグレースケール(0〜255)、傾きは法線の水平成分の大きさ √(nx² + ny²)(0〜1)です。
The assumption
置いている前提は、
ひとつだけ。
フォトメトリックステレオが仮定しているのは、面がどの向きから見ても同じ明るさで光を散らす ということだけです(拡散反射)。この仮定が成り立つ限り、明るさの変化は面の向きだけで決まります。
対象物ごとの「見え方の違い」は、突きつめるとこの前提からどう外れるかの違いです。 外れ方は 4 通りしかありません。
1〜3 は前提そのものが崩れるので、撮り方の工夫が要ります。 4 は前提は崩れておらず、光の量の問題なので、露光と灯りで解けることが多い。 式そのものを触ってみる →
1〜3 は前提が崩れる外れ方、4 は前提は崩れていない外れ方。 商談では「黒いから無理では」と言われることが多いのですが、黒さは 4 のほうです。
Experiment 02
写真では平らに見えるのは、
どの対象か。
6 枚それぞれについて、画像全体の明るさのばらつき(横)と 面の向きのばらつき(縦)を測って置きました。 左上に来るほど、写真では差が出ないのに向きでは差が出る対象です。
点をクリックすると、体験①の対象物が切り替わります。
※ これはこの 6 枚の画像から測った値であって、材質そのものの定数ではありません。 照明・露光・切り出した範囲が変われば値も動きます。順番の目安として見てください。
左上は、写真で困っている対象。
鋼板とゴムシートがここに来ます。写真では明るさがほとんど動かないので、 撮っても写っていないという状態になりがちです。面の向きにすると差が出ます。
当社が鋼板の疵検査から始まったのは、この位置にある対象だったからです。
右側は、ばらつきの中身に注意。
めっき面や紙幣は明るさのばらつきが大きく出ますが、その中身は 反射の映り込みや印刷の色であって、見たい欠陥ではありません。 「写真でコントラストがある」ことと「欠陥が見えている」ことは別です。
めっき面を選んで体験①を見ると、明るさの線は大きく動くのに、 その動きは反射の帯の位置で決まっていることが分かります。
Case by case
6 種類、それぞれの読み方。
商談で聞かれる順に並べました。すべて上の 6 枚に対応します。
| 対象 | 写真では | 面の向きでは |
|---|---|---|
| 黒い樹脂 レーザー刻印の例 |
暗部に張りつきます。この 1 枚は明るさの中央値が 19/255。 刻印はあるのに、コントラストが取れません。 | 刻印の縁が形として立ちます。黒さは前提を壊しません。 返る光が少ないだけなので、露光時間と灯りで届く範囲です。 |
| めっき・光沢面 車載めっき樹脂部品 |
照明が帯になって映り込み、そこだけ飽和します。 汚れやキズは帯の中に紛れます。 | 曲面のなだらかな向きの変化が出ます。ただし正反射している画素は前提から外れるので、 照明を増やして外れ値として捨てるなどの手当てが要ります。 |
| 細かい凹凸 ゴムシートの規則的なディンプル |
模様として見えますが、明るさのばらつきは小さい(この 6 枚で 2 番目に小さい)。 | ひとつひとつの窪みの向きが分かれます。模様が規則的なほど、乱れが目立ちます。 |
| 印刷・模様のあるもの 紙幣の凹版印刷 |
色と模様が主役になり、印刷の厚みは色に紛れます。 | 色が消えて、盛り上がりだけが残ります。 模様に紛れた形を探すときに効きます。 |
| 一様に見える金属 鋼板(実導入先の対象物) |
ほぼ無地です。この 1 枚は明るさのばらつきが 6 枚で最小。 | 圧延の筋と押し疵が出ます。この差がいちばん大きい対象です。 |
| 透明な被膜のあるもの エナメル線の絶縁被膜 |
下の銅撚り線の色が主役で、被膜の傷は色として出にくい。 | 被膜の表面と下の撚り線の両方の向きが混ざります。 被膜が押し潰された場所では撚りの筋が乱れるので、その乱れとして見えます。 |
本当の梨地(無数のランダムな微細凹凸)の実例は、まだ手元にありません。 規則的な凹凸(上のゴムシート)とは見え方が違う可能性があるので、 梨地面については試写でお答えします 〔要確認〕。
Limits
この方法が苦手な対象。
上の 6 種類はどれも撮れています。撮れない側も同じだけはっきりしています。 試写の前に、ここに当てはまるかどうかを見てください。
磨き上げた鏡面は、光をほぼ一方向にしか返しません。カメラに入るのは 「照明が映った像」であって面の向きの情報ではないので、前提としては成り立ちません。 2D で撮れば真っ黒か、映り込みだらけになります。
それでも読めた実例があります。当社のオフィスの鏡を TR-300 で撮ると、 高さマップは一様なグレー(=マクロには平坦)になり、そこを強調すると 肉眼では見えない微細なうねりと線傷が浮かびました。前提から外れる対象でも、 多方向から照らして面の形として解けば読める場合がある、ということです。
半透明の樹脂、皮膚、乳白色の材料。光が中に入って別の場所から出るので、 明るさが「その画素の面の向き」を表さなくなります。にじんだ像になります。
透明体の表面を測るのは苦手です。上のエナメル線が見えるのは、 被膜の下に光を返す銅線があるからで、透明な層そのものを測っているわけではありません。
ここに書いていない対象について、断定はしません。 表面の仕上げが少し違うだけで結果は変わります。 当社が答えを持っているのは、実際に撮ったことのある対象だけです。 サンプルをお預かりして 4 つの出力をお返しするのが、いちばん早い答えになります。
Where it sits
対象物が決めるのは、
いちばん手前の層。
対象物の表面がどう光を返すかは、センサの層の話です。 ここで形が取れていれば、後段は同じように働きます。
表面の性質を受けるのはこの層です。撮り方(灯りの数・露光・角度)で吸収できる違いと、 できない違いがあります。
どの出力で判定するかを選べます。同じ対象でも、Live で判定するか Surface Normal で判定するかで結果が変わります。
対象物の寸法・搬送の有無・タクトで機種が決まります。まず手元で撮って確かめる用途には TR-55 があります。
Contact
あなたの対象物は、
どちら側に来るか。
表面の仕上げが少し違うだけで、見え方は変わります。 画面の上で言えるのはここまでです。サンプルをお預かりして実際に撮り、 4 つの出力をお返しするところからご相談ください。
