1回撮るだけで「色」と「形」が別々に取り出せる ― Foresight Stereoでエナメルピンを3D観察する
製品表面の「色」と「形(凹凸)」は、人の目には混ざって見えます。だからこそ、色ムラなのか本当に傷があるのか、模様なのか刻印なのかを見分けるのは難しい――。今回は、ステレオ3Dイメージング技術 Foresight Stereo で1枚のエナメルピンバッジを撮影し、その1回の撮像から4種類の出力を同時に取り出した結果をご紹介します。色をはがすと形だけが残る様子を、4枚の画像で順番にご覧ください。

Foresight Stereoで撮影したエナメルピンバッジのライブ画像。オレンジのサンフェイスと青いリングがフルカラーで写る
なぜエナメルピンを観察したのか
被写体に選んだのは、サンフェイス(太陽の顔)に「EVERYBODY LOVES · THE SUNSHINE」と縁取られた、市販のエナメルピンバッジです。これは検査技術の観点で、ちょうど都合のよい2つの要素が同じ面に同居しています。
- エナメルの色グラフィック ― オレンジの顔、青いリング、文字色など、平らな面に乗った「色の情報」
- 金属の隆起ライン ― 文字や模様を仕切る金属の輪郭線、外周のフチ、サンの放射状の刻みなど、表面そのものが盛り上がった「形状の情報」
しかもエナメルと金属は光をよく反射する光沢素材で、通常のカメラでは反射と陰影が混ざり、色の濃淡なのか本当の凹凸なのかが区別しづらい。つまりこのピンは「色と形が混ざっていて、しかも反射が強い」という、検査の難所を凝縮したサンプルなのです。
Foresight Stereoとは ― 1ショットで4出力
Foresight Stereo は、TOMOMI RESEARCHのステレオ3Dイメージング技術です。最大の特長は、1回の撮像から4種類の出力を同時に生成すること。
- ライブ画像 ― 人の目に見えるそのままの見た目
- 2Dテクスチャ ― 表面の「色・模様」だけを取り出したレイヤー
- 3Dサーフェス ― 表面の「形(凹凸)」だけを復元したレイヤー
- サーフェスノーマル ― 表面の「向き」を符号化した中間データ
撮り直しや別工程を重ねるのではなく、1ショットで「色のレイヤー」と「形のレイヤー」を分けて並べられる――この同時性が、検査現場のスループットに直結します。では、実際に4つの出力を順に見ていきましょう。
① ライブ画像 ― 色も形も混ざった「出発点」
最初は ライブ画像。人の目で見たままの状態です(冒頭の画像)。
鮮やかなオレンジのサンフェイス、深い青のリング、金属の光沢とエナメルのツヤ。文字も模様もくっきり見えますが、ここでは「色」と「形」がひとつの絵の中に溶け合っています。青いリングの上の文字が、塗り分けなのか、それとも金属の段差で仕切られているのか――人の目には判然としません。この「混ざった状態」が、これから分離していく出発点です。
② 2Dテクスチャ ― 色(アルベド)だけを残す
次は 2Dテクスチャ。色だけを抜き出したレイヤーです。

Foresight Stereoの2Dテクスチャ出力。陰影を除去し色・模様(アルベド)だけを抽出したグレースケール画像
照明による陰影やハイライトが取り除かれ、文字や模様がフラットで均一な明るさで読めるようになりました。ここで取り出しているのは、専門的には アルベド(素材そのものが本来持つ色・反射率) ― つまり「照明や凹凸の影に邪魔されない、素材の地の色・模様」です。
- 残しているもの: 文字・模様・塗り分けといった表面のデザイン情報
- 捨てているもの: 凹凸が作る影やハイライト
凹凸の影に惑わされずに模様だけを評価できるため、印刷ズレ・色ムラ・かすれ・欠けといった「色側」の不良を見るのに向いています。
③ 3Dサーフェス ― 色を捨て、形だけを残す(本記事のハイライト)
そして今回の主役、3Dサーフェスです。

Foresight Stereoで復元した3Dサーフェス。色が消え、金属ラインの隆起やエナメルの段差など凹凸だけが浮かび上がる
色がすべて消え、レリーフ(浮き彫り)のように凹凸だけが浮かび上がりました。
- エナメルと金属の段差 ― 文字を囲む金属ラインの隆起、リングとサンの境目の段差が、なめらかな起伏として立ち上がっています。
- サンの放射状の刻み ― 太陽の周りの細かいギザギザが、影をともなって立体的に読めます。
- 顔のレリーフ ― 目・鼻・口のわずかな盛り上がりまで、形として残っています。
ここで起きているのは、「平らな面に乗っているだけの色は、形として存在しないから消える」ということです。青いリングの色も、オレンジの顔の色も、3Dサーフェスには現れません。残るのは、物理的に表面が変形している部分だけ。つまりForesight Stereoは「何色が乗っているか」を取り除き、「どんな形をしているか」だけを純粋に取り出しているのです。これは、金属ラインの欠け・バリ・打痕・気泡といった形状側の欠陥を見るための視点です。
④ サーフェスノーマル ― 表面の「向き」を色で表す
最後は サーフェスノーマル。3Dサーフェスを復元する元になった中間データです。

Foresight Stereoのサーフェスノーマル出力。各画素の表面の向きを色で符号化した法線マップ
全体が青系に発光したような、独特のマップになっています。これは サーフェスノーマル(表面の法線=各画素の表面が向いている方向) を色で符号化したものです。「法線」とは、その点の表面がどちらを向いているかを示す矢印のようなもので、面の傾きが変わる場所=エッジや凹凸の立ち上がりで色が鋭く変化します。
実際この画像では、文字の縁・サンの放射線・顔の輪郭といった「表面の傾きが切り替わる線」がくっきりと現れています。微小な凹凸やエッジの立ち上がりに鋭敏なため、3Dサーフェス復元の土台となるだけでなく、わずかな段差や微細なキズの手がかりを読む生データとしても機能します。
検査現場での意味 ― 「色か、形か」を切り分ける
4つの出力を並べて見ると、Foresight Stereoが現場にもたらす価値が見えてきます。
- 色ムラと傷を切り分ける ― 2Dテクスチャ(色)と3Dサーフェス(形)を分けて見ることで、「これは色ムラ(テクスチャ欠陥)なのか、それとも傷・打痕(形状欠陥)なのか」を切り分けられます。
- 光沢・反射素材に強い ― 金属やエナメルのように反射が強く、通常のカメラでは傷が光に紛れてしまう素材でも、形として凹凸を捉えられます。
- 刻印・エンボスを読む ― 印刷や塗装の下にある刻印・隆起・微細なレリーフを、色に惑わされずに読み取れます。
- 1ショットで完結 ― 4つの視点を別々に撮り直すのではなく、1回の撮像で同時に得られるため、検査のスループットを落としません。
なお、今回はあくまで1サンプルの観察デモであり、あらゆる素材・あらゆる欠陥への性能を保証するものではありません。それでも、「色と形を分けて見る」という発想が検査をどう変えうるかは、4枚の画像が雄弁に物語っています。
まとめ
- Foresight Stereo は、1回の撮像からライブ画像・2Dテクスチャ(色)・3Dサーフェス(形)・サーフェスノーマル(向き)の4出力を同時生成するステレオ3Dイメージング技術です。
- エナメルピンでは、2Dテクスチャに色だけが残り、3Dサーフェスでは色が消えて凹凸だけが浮かび上がりました。 人の目では混ざる「色」と「形」を、別レイヤーに分離できます。
- 色と形を分離できることは、色ムラと傷の切り分け・光沢素材の検査・刻印の読み取りといった現場課題に直結します。
お手元の難サンプル(光沢・反射素材、色と凹凸が混在するワーク)でForesight Stereoを試してみたい方へ。デモやサンプル評価のご相談を承っています。お気軽にお問い合わせください。

