この硬貨、ちゃんと"見えて"いますか? ― FORESIGHT STEREO Viewerで、色と形を別々に取り出す

毎日のように手にしている硬貨。見慣れているはずのその表面は、本当に「見えて」いるでしょうか。当社の3D画像化技術 FORESIGHT STEREO® を、現場の担当者がその場で操作できるGUIアプリケーションにしたのが FORESIGHT STEREO Viewer です。英国2ポンド硬貨を1回だけ撮像しました。まずは2枚を見比べてください。

左が「見えている」もの、右が「写っている」もの


[左はライブ画像。英国2ポンド硬貨の外周の金色リングと内側の銀色ディスクの色差がはっきり見えるが、表面はほぼ平坦に見え、微細な擦り傷はほとんど判別できない。右は3Dサーフェス。色が消えて形だけが残り、金/銀の境界が消滅し、全面に無数の微細な擦り傷が現れる]

同じ硬貨の、同じ1回の撮像です。左はカメラが捉えたままのライブ画像。バイメタル(外周=金色のリング/内側=銀色のディスク)の色差がはっきり見え、ELIZABETH·II·DEI·GRA·REG·FID·DEF の刻印も読めます。ただし表面はほぼ平坦に見え、細かな擦り傷はほとんど判別できません。

右は同じデータから取り出した3Dサーフェス(表面の形=凹凸だけを復元した出力)です。

消えたもの、現れたもの

3Dサーフェスで起きたことは2つあります。

消えたもの ― 金/銀の境界。 左の画像であれほど明確だった外周リングと内側ディスクの境目が、右では見つけられません。あれは「色」であって「形」ではなかった。色の情報が確かに落ちていることの、目で分かる証拠です。

現れたもの ― 傷と、微小刻印。 肖像面にも地の面にも、無数のヘアラインスクラッチ(細い擦り傷)が全面に浮かび上がりました。文字・王冠・髪の一本一本・ビーズ列の縁が鋭く立ち上がり、硬貨の縁の打痕や変形も形として現れます。そして肖像の左下、ライブ画像では黒い点にしか見えなかった微小刻印 IRB(デザイナーのイニシャル)が、文字として読めます


[微小刻印IRB周辺の拡大対比。左のライブ画像ではほとんど判別できない刻印が、右の3Dサーフェスでは文字として読める]

上は同じ撮像の同じ箇所を拡大したものです(トリミングのみ)。左では小さな痕跡、右では IRB という文字。

「見えている」と「写っている」は違う。 肉眼で見えているつもりのものと、そこに実在して写し取れる情報は別物です。

過去にご紹介した鋼板の打痕(色では見えない欠陥が3Dで現れる)と、半導体の変色(色の異常が3Dで消える)。今回はその両方が、1枚の硬貨に同時に起きています。

これは、ラジオボタン1つの操作です

ここまでの画像は、特別な処理でも研究室の手順でもありません。


[FORESIGHT STEREO Viewer の操作画面。左に3Dサーフェス表示の硬貨、右に Show Mode / Enhance Mode / Preprocess Mode / Auto Object Alignment / Image Save Mode / Control の各設定パネル、下部に3出力のプレビュー]

これが FORESIGHT STEREO Viewer の画面です。右側パネルの Show Mode に並ぶ 2D Texture / 3D Surface / Surface Normal の3つのラジオボタン。先ほどの「消えた/現れた」は、このうち 3D Surface を選んだ状態にすぎません。

今回の主役は、硬貨ではなくこの画面です。 技術のパラメータが操作対象として画面に露出していて、現場の担当者が自分で触れる。それがこのアプリケーションの中身です。

1回の撮像から、4つの出力

  • ライブ画像 ― 人の目に見えるままの見た目
  • 2Dテクスチャ ― 表面の色・模様だけ(アルベド=素材そのものの色・反射率)。陰影オフ
  • 3Dサーフェス ― 表面の形(凹凸)だけを復元
  • サーフェスノーマル ― 表面の向き(法線=面がどちらを向いているか)を色で符号化


[2Dテクスチャ。グレースケールで陰影が取り除かれ、外周リングと内側ディスクの境界が微妙なトーン差として残っている]

2Dテクスチャは陰影が取り除かれ、素材そのものの明暗だけが残った状態です。ライブ画像よりさらに平坦に見え、形の情報はほぼ失われています。一方で外周リングと内側ディスクの間には、境界が微妙なトーン差として残っています ― 色のレイヤーですから、当然です。境界が消えたのは3Dサーフェスだけでした。


[サーフェスノーマル。青紫〜藤色を基調に面の傾きが色で符号化され、刻印やビーズの立ち上がりがシアン/マゼンタで縁取られる]

サーフェスノーマルは3D復元の元データです。青紫〜藤色を基調に面の傾きが色として符号化され、刻印やビーズ列の立ち上がり部がシアンやマゼンタで縁取られます。硬貨全体の丸みが、外周に向かう滑らかなグラデーションとして現れているのが分かります。

舞台裏 ― 照明方向ごとの生画像8枚

Save Images (Each Channel) にチェックを入れると、照明方向ごとの生画像8枚がそのまま保存されます。これまでの記事ではお見せしてこなかった、出力の"原材料"です。


[照明方向ごとの生画像8枚を4×2に並べたグリッド。同じ硬貨・同じ位置だが、1枚ごとに照明方向が異なり、王冠・髪・外周文字のハイライトと影の落ちる側が変わっている]

同じ硬貨、同じ位置、同じ向き。違うのは照明の方向だけです。王冠・髪・外周の文字・ビーズ列で、ハイライトと影の落ちる側が入れ替わっているのが分かります。

とくに ch01ch05 を見比べると、その入れ替わりがはっきりします。

この陰影差から各画素の面の向き(法線)を解き、そこから形と色を分離して算出する。これがフォトメトリックステレオの原理であり、FORESIGHT STEREO® の土台です。8枚を出せるということは、この土台をそのまま検証できるということでもあります。

開かれた設計

FORESIGHT STEREO Viewer はブラックボックスではありません。

  • 自作のPython前処理を差し込めるPreprocess Mode
  • 照明方向別の生画像8枚をそのまま保存できるSave Images (Each Channel)
  • SAM2 Mask タブを備える(SAM2=Segment Anything 2。本記事では画面上にタブが存在することまでをお伝えします)

自社のノウハウを前処理として組み込む、生データを取り出して独自に検証する。そうした使い方に開かれた設計です。

現場での意味

  • 色コントラストのない形状欠陥の観察 ― 打痕・凹み・傷など、色では捉えにくい特徴を形として見る
  • 光沢面の観察 ― 陰影と素材そのものの明暗を分けて確認する
  • 限度見本の比較検討 ― 合否の境目を、形状という共通の見方で並べて検討する
  • 検査条件の事前検証 ― 担当者がその場で出力を切り替え、条件を試せる

いずれも「これで検出できます」ではなく、現場の目を助ける観察手段としてご活用いただけます。

まとめ

本記事の画像は、英国2ポンド硬貨1枚を対象とした観察デモの結果です。あらゆる対象物・条件における性能を保証するものではなく、また寸法や深さの測定結果でもありません。掲載した画像は、対象物の形状を可視化したものです。

そのうえで、お伝えしたいことは1つです。色と形を分けて見るという発想は、もう研究室の中だけのものではありません。ラジオボタン1つで、現場のPCから出せます。


お手元のワーク(色では見えにくい凹凸欠陥、光沢面、限度見本での判定に悩むサンプルなど)で FORESIGHT STEREO Viewer を試してみたい方へ。株式会社TOMOMI RESEARCH では、デモやサンプル評価のご相談を承っています。 [要確認: 誘導リンクURL/お問い合わせフォームURL]

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