能のすすめ 〜伝統芸能とAI異常検知の共通点〜

私が能楽に興味を持ったきっかけは、幼い頃に能舞台で袴姿の女性が舞う姿を見て、「なんてかっこいいんだろう」と感じたことでした。その時の感動はしばらく忘れていましたが、後になってそれが「仕舞」という能の一部であることを知りました。


写真の出典:https://daimatsu.hp.gogo.jp/pc/free3.html

能楽は日常生活の中でなかなか触れる機会が少ないものです。しかし、ある時、上司のご親戚が能のお稽古をされていると聞き、ご縁があって能楽師の先生に仕舞を習うことになりました。型を覚え、先生の動きを真似てみても、なかなか美しさや奥深さを感じることはできません。そこで、能楽堂に足を運び、数多くの演目を観て「何が違うのか」を自分なりに学ぼうとしました。
同じ演目でも、演者によって感じ方が異なります。勉強のためにお弟子さんたちの発表会(素人会)にも足を運びますが、時には「本当に先生では?」と思うほど引き込まれる舞に出会うこともあります。一方で、一曲を通して観ていると、どこかに違和感を覚えることもあります。その違和感が何なのか、言葉で表現するのはとても難しいものです。

この「違和感を感じる」という体験は、当社の異常検知AIの仕組みとよく似ています。プロの能楽師の演目を何度も観て、その美しさに感動し、繰り返し学ぶことで「良いもの」の特徴が自然と身につきます。自分で舞ってみると「何かが違う」と感じる――これがまさに異常検知の本質です。

当社の異常検知AIも、良品データを学習することで「正常な状態」の特徴を把握し、不良品や異常があれば「良品にはない特徴がある」と教えてくれます。人間も、繰り返し観察することで無意識のうちに「良いもの」の特徴を覚え、それに当てはまらないものを違和感として捉えます。AIも同じように、その違和感を数値化し、抽出しているのです。

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