人工皮革のシボを撮る:色の模様と「形」を1回の撮像で分けて見る

人工皮革の表面には、シボ(表面の型押し模様)が一面に広がっています。この模様はそれ自体が複雑な背景になるため、傷や型押しの乱れ、異物、しわといった「形」の異常が、色の濃淡に紛れて見分けにくくなりがちです。

では、シボの模様の上で"形"の違いだけを見るにはどうすればよいのでしょうか。人工皮革の外観についてご相談をいただく機会があり、以前TR-100で撮影した画像を改めて見直してみました。

撮影したもの:シボのある赤色の人工皮革

被写体は、市販の赤色の人工皮革です。鞄用の素材として販売されていたもので、表面にシボがあります。欠陥サンプルではなく、通常品の表面をそのまま撮影しました。撮影日は2026年10月6日、視野は約50mm角です。

撮影には、AIビジュアル検査システム「TR-100」を使いました。TR-100の技術「FORESIGHT STEREO®」は、1回の撮像から次の4つの画像を出力します。

モード 何を表すか 人工皮革で見えたもの
Live(カラー) 通常のカメラで見た見た目 明るい赤の帯と濃い赤の島による色の濃淡
2D Texture(グレー) 陰影を除いた表面の色・模様 Liveとほぼ同じ濃淡の模様
3D Surface(グレー) 凹凸を浮き彫りのように表現 細い溝の線がつくる多角形の網目
Surface Normal(カラー) 面の向きを色で表現 シボ一つ一つのふくらみが多角形のセルに

視野全体で見比べる:色の濃淡と、溝の網目

人工皮革の視野全体をLive・2D Texture・3D Surface・Surface Normalの4モードで並べた比較画像
視野全体の4モード比較。上段左からLive/2D Texture、下段左から3D Surface/Surface Normal。

Liveでは、赤い表面全体にシボの網目模様が広がり、「明るい赤の帯」と「濃い赤の島」という色の濃淡として見えます。2D Textureでは色がグレーになりますが、明るい網目と暗い島という、Liveとほぼ同じ濃淡の模様が残ります。

一方、3D Surfaceでは色の濃淡が消え、シボの溝が細い線の網目(多角形のネットワーク)として均一に現れます。視野全体で溝の走り方が一様であることも、このモードならひと目で分かります。Surface Normalでは、青〜紫の色の中に、シボ一つ一つのふくらみ(面の傾き)が多角形のセルとして並びます。

中央約12mm角を拡大:模様と凹凸は「形が違う」

人工皮革の中央約12mm角を4モードで拡大して並べた比較画像
中央約12mm角の拡大比較。色の模様と溝の網目の違いがはっきり表れる。

全体画像の中央、約12mm角を切り出して並べました。今回の観察で最も違いが際立ったのが、この拡大です。モードごとに見ていきます。

Live:幅のある赤い帯と、濃い島

人工皮革の拡大Live画像。濃い赤の島と周りの明るい赤の帯
Live:濃い赤の島と、その周りの明るい赤の帯。

Liveでは、濃い赤の島と、それを囲む明るい赤の帯が見えます。帯にはある程度の幅があり、目視で「シボ模様」として捉えているのは、この色の模様です。

2D Texture:陰影を除いても残る色の模様

人工皮革の拡大2D Texture画像。グレーで濃い島と明るい帯の模様
2D Texture:グレーになっても、島と帯の模様はLiveとほぼ同じ。

2D Textureは、陰影を除いた表面の色・模様を表す画像です。グレーになっても、濃い島と明るい帯という幅のある模様は、Liveとほぼ同じ形で残っています。

3D Surface:細くシャープな溝の線

人工皮革の拡大3D Surface画像。細い溝の線が多角形の網目をつくる
3D Surface:細くシャープな溝の線が多角形をつくる。

3D Surfaceでは、印象が一変します。幅のある帯や濃い島は見えず、代わりに細くシャープな溝の線がつながって多角形をつくっています。

カラーで見ていた「色の帯・島」と、3D Surfaceに現れる「溝の網目」は、形が違います。見た目の模様と実際の凹凸は、別物です。

Surface Normal:向きの違う小さな丘

人工皮革の拡大Surface Normal画像。溝で区切られたセルが面の向きごとに色分けされる
Surface Normal:溝で区切られた各セルが、向きの違う面として色分けされる。

Surface Normalでは、溝で区切られた各セルが、それぞれ向きの違う面として色分けされます。シボの一つ一つが、溝に囲まれた小さな丘のような形をしていることが読み取れます。

なぜ色と形を分けて取り出せるのか:8方向から照らした8枚

照明方向を周囲8方向に順に変えて撮影した人工皮革のグレー画像8枚
元画像の8枚。照明方向を周囲8方向に順に変えて撮影した。

4つの出力の元になっているのは、照明方向を周囲8方向に順に変えて撮ったグレーの8枚です。並べてみると、明るく照らされる側が1枚ごとに回っていく様子が分かります。

この仕組みは、フォトメトリックステレオ(照度差ステレオ法)と呼ばれる手法に基づいています。カメラと対象を固定したまま照明方向だけを変えて撮影し、同じ場所の明るさが照明ごとにどう変わるかを比べることで、表面がどちらを向いているか(法線)を推定します。

通常の画像では、色・模様と、凹凸による明暗が重なって写ります。複数の照明条件を使うことで、面の向きと表面の反射の特性を分けて推定できるため、色の模様と形を別々の画像として取り出せるのです。

人工皮革の外観検査への示唆

シボの模様は、カラー画像の上では検査の背景として複雑に見えます。形だけを別の画像として見られることは、形が問われる次のような項目の検討に役立つ可能性があります。

  • 傷
  • シボ潰れ(型押しの乱れ)
  • 異物
  • しわ

なお、凹凸を伴わない色むらや汚れは、Liveや2D Textureも併せて見ていくことになります。どの項目がどう見えるかは、実際のサンプルで確かめる必要があります。

まとめ:通常品の観察から、欠陥サンプルでの評価へ

カラー画像で見ているシボの模様と、実際の凹凸は別物です。FORESIGHT STEREOでは、それを1回の撮像で別々の画像として見ることができました。

今回は通常品での観察例で、傷やシボ潰れなどを含むサンプルでの評価はこれからです。人工皮革や皮革製品の外観について検討されている方は、ぜひお手持ちのサンプルでの撮影をご相談ください。


シボのある素材の「形」を見てみたい方へ。サンプル撮影のご相談はお問い合わせフォームから、TR-100の詳細は製品ページをご覧ください。

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