実装基板を「色と形」に分けて見る:PCB外観検査と4つの画像表現

実装基板の外観検査では、はんだの形状、部品の浮き、リードの曲がりなど、「形」が問われる項目が少なくありません。ところが通常のカラー画像では、はんだやリードが照明を強く反射して白く光り、肝心の形が読み取りにくくなりがちです。

カラー写真で光ってしまう金属部の“形”は、どうすれば見えるのか。本記事では、TR-100(技術:FORESIGHT STEREO®)で実装済みのプリント基板を撮影し、同じ1回の撮像から得られる4つの画像表現を見比べます。

撮影したもの:市販HDDの制御基板(良品)

被写体は、市販HDDの制御基板(社内サンプル)です。表面実装部品であるQFP(四辺からリードが伸びたICパッケージ)、チップ抵抗・コンデンサ、SOPのほか、スルーホールやコネクタも載った、ごく一般的な実装基板です。

  • 撮影装置:TR-100(AIビジュアル検査システム)
  • 技術:FORESIGHT STEREO
  • 撮影日:2026年8月29日
  • 状態:欠陥のない良品

今回は欠陥を探すための撮影ではありません。良品の基板が、モードごとにどのような姿で現れるのかを観察した記録です。

基板全体を4つのモードで見比べる

FORESIGHT STEREOは、1回の撮像から次の4種類の画像を出力します。

モード 何を表すか この基板で見えたもの
Live 通常のカメラで見た見た目(カラー) 緑のレジストと金色のランド。金属部は白飛び
2D Texture 陰影・反射を除いた表面の色・模様 シルク印刷や刻印が均一なトーンで読める
3D Surface 凹凸を浮き彫りのように表現 配線の起伏、リード列、部品の輪郭
Surface Normal 面の向きを色で表現(表面法線マップ) 部品の縁や盛り上がりの境界


基板全体を4モードで比較。同じ基板でも、色を見るか形を見るかで印象が大きく変わる。

全体像で並べると、Liveでは「緑の基板に部品が載っている」という見た目が中心です。一方、3D SurfaceやSurface Normalでは色の情報が消え、基板の上で何が盛り上がり、どこが平らなのかが前面に出てきます。

メインIC周辺を拡大して見比べる

次に、メインのIC(QFP)とその周辺を拡大します。


メインIC周辺の拡大比較(左上:Live、右上:2D Texture、左下:3D Surface、右下:Surface Normal)。

Live:見慣れた姿だが、金属部は光る

Live:はんだ・パッド列が鏡面反射で白く光っている。

Liveは、普段カメラで見るとおりの画像です。緑のソルダーレジスト(基板表面を覆う絶縁膜)と金色のスルーホールランドがはっきり分かります。一方で、はんだ・リード・パッドには強い鏡面反射(白飛び)が出ており、金属部は光の塊のようになって形が読み取りにくくなっています。

2D Texture:反射を抑え、文字や模様が読める


2D Texture:シルク印刷やICの刻印が均一なトーンで読める。

Liveでは光の当たり方で明るさがばらついていましたが、2D Textureでは反射・陰影が抑えられます。シルク印刷の「94V-0」「2-9」や型番文字、ICの刻印が均一なトーンで読み取れ、パッド列の白飛びも抑えられています。「表面に何が描かれているか」を見るための表現です。

3D Surface:色を消し、凹凸だけを浮き彫りに


3D Surface:QFPのリード列、チップ部品の輪郭、配線の起伏が立体的に見える。

Liveでは光って見えなかった部分が、3D Surfaceでは立体の形として現れます。色の情報が消え、ソルダーレジストの下を通る配線パターンの起伏、QFPのリード列、チップ部品の輪郭、パッド列、スルーホール周辺の形状が浮き彫りのように見えます。シルク印刷の文字も、わずかな起伏として現れています。

Surface Normal:面の向きを色で塗り分ける

Surface Normal:ICパッケージやコネクタの縁、部品の盛り上がりが色で分かれる。

法線とは、面がどちらを向いているかを示す向きのことです。Surface Normalではこの向きを色で表すため、平らな基板面は一様な色になり、ICパッケージやコネクタの縁、部品の盛り上がりのように面の向きが変わる箇所がはっきり分かれて見えます。Liveの色や模様に惑わされず、「どこで形が変わっているか」をつかみやすい表現です。

なぜ色と形を分けて取り出せるのか:フォトメトリックステレオ

FORESIGHT STEREOの土台にあるのは、フォトメトリックステレオという手法です。対象物に複数の方向から照明を当てて撮影すると、面の傾きによって明るさの変わり方が異なります。その違いから、各点で面がどちらを向いているか(法線)を推定します。

面の向きが分かれば、照明による陰影や反射の影響と、表面そのものの色・模様とを分けて扱えます。こうして、同じ撮像から「色・模様」の画像と「形」の画像を別々に取り出せる仕組みです。

PCB外観検査への示唆:「形」が問われる項目の検討に

今回の観察から、3D SurfaceやSurface Normalのような表現は、PCB外観検査のうち「形」が重要な次のような項目の検討に役立つ可能性があると考えています。

  • はんだの形状(フィレットの盛り上がり方など)
  • 部品の浮き
  • リードの曲がり
  • 異物の付着
  • 傷

いずれも、カラー画像では反射や色の模様に埋もれやすい「形」の情報です。2D Textureで文字・模様を、3D SurfaceとSurface Normalで形を、と役割を分けて見られる点は、検査方法を検討するうえでの具体的な材料になるはずです。

これから:良品の観察から、評価へ

今回お見せしたのは、あくまで良品の観察例です。実際の欠陥サンプルで各表現がどのように現れるかの評価は、これから進めていきます。

お手元の基板や部品で「形」の見え方を確かめてみたい、という方からのご相談やサンプル撮影のご依頼を歓迎します。現場の検査課題と照らし合わせながら、一緒に検討できれば幸いです。

まとめ

FORESIGHT STEREOを使うと、同じ1回の撮像から「色・模様」と「形」を別々の画像として取り出せます。カラー画像では白飛びしていたはんだやリードが、3D SurfaceやSurface Normalでは立体の形として現れ、2D Textureではシルク印刷や刻印が均一なトーンで読めました。PCB外観検査の「形」に関わる検討材料として、ぜひ参考にしてください。


実装基板の外観検査や、サンプル撮影のご相談は、株式会社TOMOMI RESEARCHまでお気軽にお問い合わせください。 [https://www.tomomi-research.com/contact]