「能の一声に心が揺れる日 〜友と感じた静謐な舞台の力〜」
先日、友人を誘って能楽堂へ足を運びました。私自身、能楽が好きでお稽古をしていた時期もあるのですが、友人は能を観るのが初めて。興味はあっても、能は決して分かりやすい芸能ではないので、楽しんでもらえるか少し不安もありました。
しかし、能楽堂の静謐な空間に一歩足を踏み入れると、舞台や鏡板、屋根、客席など、すべてが新鮮で、日常とは違う世界が広がります。最初の演目は舞囃子「高砂」。能楽師や囃子方が舞台に現れ、静けさの中、「高砂や この浦舟に帆をあげて…」と謡が響きます。笛や小鼓、大鼓、太鼓の音色が重なり合い、現実から離れて能の世界に引き込まれていく感覚は、何度体験しても新鮮です。
舞台上の一人ひとりが創り出す緊張感や穏やかな空気の変化は、まさにその場でしか味わえないもの。今回、初めてお能を観た友人に感想を尋ねると、「最初の謡『高砂や この浦舟に帆をあげて』の一声に打たれた」と。声量ではなく、心に響く衝撃だったそうです。そこからは、それぞれが心揺さぶられた場面や感じたことを語り合い、「そういう見方もあるんだね」と共感したり、新たな気づきを得たりできました。仕事を離れ、素直な感情を言葉にできる時間をくれたお能の舞台と友人に、感謝です。「また一緒に観に行こう」と約束し、新たな楽しみができました。
藤戸 (観世流特製一番本)
仕事にも通じる「心の揺らぎ」
能の舞台で感じた「心の揺らぎ」や「新たな気づき」は、日々の仕事にも通じるものがあります。私たちの業務でも、普段の視点から一歩離れてみることで、新しい発見や発想が生まれます。お客様や仲間と体験や感動を共有し、そこから次の一歩を踏み出す――そんな積み重ねが、より良い仕事やサービスにつながると感じています。