同じTR-100、レンズだけを高倍率に替えて半導体チップを見てみた

検査で見え方を左右するのは、装置の性能そのものより「どのレンズで、どの視野で撮るか」という条件設計であることが少なくありません。今回はAIビジュアル検査システム TR-100 に高倍率レンズを装着し、半導体チップのサンプルを撮像しました。前回(2026-06-16)と装置も被写体の種類も同じで、変えたのはレンズ1つだけです。


検査装置内部の黒い載物台に、格子状の目盛りと英数字インデックスが印刷された透明ケース入りの半導体チップが1つ置かれ、手前と奥の2本のバー照明が点灯、その上方にカメラと黒い円筒状の鏡筒が下向きに構えている様子

チップは淡い緑〜金色の光沢を持つ小さな正方形で、ケースの格子の中央に位置しています。上方の鏡筒が今回の高倍率レンズです。

視野を狭める代わりに、何が手に入るのか

レンズ選択は、視野と分解能のトレードオフです。高倍率にすると一度に撮れる範囲は狭くなりますが、その分、1画素が担う実寸が小さくなります。標準レンズでは「模様」としてしか写らなかった微細構造が、輪郭を持った「形」として捉えられるようになる——これが今回の狙いです。

つまり、レンズを選ぶことは、そのまま「何を見るかを選ぶ」ことでもあります。

まず、見たままの姿 ― 高倍率のライブ画像


半導体チップ表面のフルカラーライブ画像。灰〜赤紫がかった金属光沢の面を縦横1本ずつの直線が十字に交差して4区画に分け、直線中央に緑〜黄緑の細い輝線と赤い微小な点が光る。直線の両側には小さな四角が等間隔で連なる帯が伸び、上半と中央には市松・網目状のパターンで埋まった矩形ブロックと縦縞の櫛状パターンが並ぶ。区画内側の広い面は無地の灰色で、白や淡青の微細な輝点が散在している

ダイシングストリート(スクライブライン)に相当する十字の直線、その両側に等間隔で並ぶ四角の帯、市松状のブロックと櫛状のパターンが確認できます。ただしこの段階では色と陰影が混ざったまま。散在する輝点が付着物なのか色の変化なのかは、この画像だけでは判断できません。

色を消すと、平坦さと粒立ちが同時に分かる

3Dサーフェス出力。画面全体が中間グレーになり赤紫・緑・赤の色が完全に消え、代わりにエッジと段差が陰影のレリーフとして立ち上がっている。市松ブロックの粒の一つひとつ、櫛状パターンの縦線、直線沿いの四角の列が輪郭のある立体パターンとして分離して見え、下部・中央左には水平の細い縞が並ぶ矩形領域が現れている

色を取り去ると、状況が反転します。広い面は平坦なグレーのまま残り、色ムラではなく実際に平らであることが確認できます。一方でエッジと段差はレリーフとして立ち上がり、ライブ画像では潰れていた市松ブロックの粒や櫛の1本1本が、個々の要素として分離して見えます。ライブ画像では見えにくかった水平の細い縞が並ぶ領域も、ここで形として明瞭になります。

散在していた輝点の一部は、この出力でも小さな粒として残っています。色の付着ではなく、形としても現れている——つまり実際に高さを持つ微小な凸だと読み取れます。


*4方向の照明で撮影した元画像を2×2に並べた一覧。同じ視野を異なる方向から照らした4枚で、陰影の出方がそれぞれ異なっている

この分離を支えているのが FORESIGHT STEREO®(フォトメトリックステレオを独自に発展させた当社の3D画像化技術)です。入力は1回の撮像で、4方向の照明で撮った画像群から色と形を同時に復元しています。撮り直しは不要です。

面の「向き」で見る ― サーフェスノーマル


サーフェスノーマル出力。画面のほぼ全面が単一の濃い青で埋まり、その中で十字の直線、四角の列、市松ブロック、櫛状パターンの輪郭だけが青の濃淡・色相の微差として浮き彫りのように浮かんでいる

サーフェスノーマルは、各点の面の向きを色で符号化した出力です(色そのものに意味はありません)。向きが揃っていれば同じ色、面が傾けば色が変わります。ほぼ全面が単一の濃い青ということは、面の大半がカメラ側を向いた平坦な状態だということ。構造のある箇所だけが淡い凹凸として浮かびます。

高さの「見せ方」を切り替える

同じ3Dサーフェスでも、高さの表示方法を変えると読み取れる情報の種類が変わります。なお、以下はいずれも絶対値ではなく相対的な高低の表現です。


強調+カラーマップ表示。青⇔白⇔赤(オレンジ)の2色系カラーマップで、十字の直線と四角の列が明瞭な青の帯として抜け、ブロックの外周や段差の縁にオレンジ〜赤の縁取りが現れる。市松ブロック内部は青とオレンジが細かく混在し、広い平坦面の淡色の中にオレンジや赤の小さな点が散在している

カラーマップでは、十字の直線と四角の列が青い帯として抜けます。周囲より低い、溝状の構造だと一目で分かります。段差の縁にはオレンジ〜赤の縁取りが出るので、境界のどちら側が高いかも色で読めます。そして広い平坦面に散るオレンジや赤の小さな点——周囲より高い微小な凸が、色で目立つようになります。異物探しが直感的になるのがこの表示の要点です。


強調+バンド表示。黒い枠の付いたモノクロ画像で、高さが等高線状のバンドに量子化され、平坦面が均一なグレーの面、構造部が白と黒のはっきりした階調差として分かれている。市松ブロック・櫛状パターン・四角の列は輪郭が硬く模様として読み取りやすく、広い平坦面には淡い白のぼんやりした点や小さな十字状の輝きがいくつも見える

バンド表示は高さを段階に量子化します。構造部の輪郭が硬くなって模様として読み取りやすくなる一方、広い平坦面には淡い白のぼんやりした点や小さな十字状の輝きが現れます。ライブ画像では気づきにくいわずかな起伏や付着物が、段階表示によって浮かび上がった形です。うねりや微小な高低差の分布を面全体で捉えたいときに向きます。

検査の現場では、どう効くのか

高反射・光沢素材の検査では、「色ムラなのか形状欠陥なのか」の切り分けがしばしば争点になります。色と形を分けて出力できれば、この判断は目視でも自動判定でも扱いやすくなります。今回のように広い面が実際に平らだと確認でき、逆に色に紛れていた微小な凸が形として拾える——それが分離の実利です。

捉えたい欠陥のサイズと、一度に見たい範囲。この2つから逆算してレンズと視野を決める設計の考え方に、今回の比較が判断材料として使えるはずです。

まとめ

  • 装置を替えなくても、レンズを替えれば見える対象が変わる。 高倍率レンズは視野を狭める代わりに、模様に紛れていた微細構造を形として捉えられるようにします。
  • 色と形は分けて見るべき情報で、高倍率ほど分離が効く。 FORESIGHT STEREO® は1回の撮像から両方を分離して出力します。
  • 高さの見せ方も選べる。 カラーマップは「どこが高い/低いか」の直感把握に、バンド表示は面全体のうねりの把握に向きます。

本記事は1サンプルの観察デモであり、汎用的な検出性能を保証するものではありません。実際の見え方はワークの材質・表面状態・求める欠陥サイズによって変わります。


自社のワークがどのレンズ・どの視野で見えるのかを確認したい方は、株式会社TOMOMI RESEARCH までお問い合わせください。サンプルをお預かりしての撮像検証も承っています。