バンプの「変色」か「つぶれ」か ― Foresight Stereoで半導体チップを1回撮り、色と形を分けて見る

半導体のバンプ/パッドアレイは、見たい欠陥の多くが「形(高さ・つぶれ・欠損)」に宿ります。ところが表面には酸化やシミといった「色」の情報も混ざり、しかも銅やはんだは光をよく返すため、通常の2D外観検査では照明の映り込み(グレア)にバンプが紛れがちです。今回は、ステレオ3Dイメージング技術 Foresight Stereo で銅色の半導体チップを1枚撮影し、その1回の撮像から4種類の出力を同時に取り出した結果をご紹介します。色をはがすと、バンプの「形」だけが突起の海として立ち上がる様子を、4枚の画像で順番にご覧ください。

Foresight Stereoで撮影した半導体チップのライブ画像。銅色の基板に格子状ユニットが並び、各ユニット内に微細バンプが規則アレイ状に配置され、一部に茶色いシミ状の変色が見える
Foresight Stereoで撮影した半導体チップのライブ画像。銅色の基板に格子状ユニットが並び、各ユニット内に微細バンプが規則アレイ状に配置され、一部に茶色いシミ状の変色が見える

なぜ半導体のバンプアレイを観察したのか

被写体に選んだのは、銅色の半導体チップ/パッケージ基板です。ダイシングストリート(チップを切り分けるための区画ライン)で格子状に区切られた各ユニットの中に、微細なバンプ(パッド)が高密度の規則アレイ状に並んでいます。これは検査技術の観点で、難しさが同じ面に凝縮されたサンプルです。

  • 色の情報 ― 一部のセルに見える茶色いシミ状の変色。酸化や汚れなど、平らに乗った「色側」の手がかり
  • 形の情報 ― 各バンプの高さや形、配線トレースの微細な凹凸、セル境界の段差など、表面そのものが起伏した「形側」の手がかり

さらに銅・はんだは高反射素材で、通常のカメラでは反射と陰影が混ざり、色の濃淡なのか本当の凹凸なのかが区別しづらい。つまりこのチップは「色と形が混ざっていて、しかも反射が強い」という、バンプ検査の難所を凝縮したサンプルなのです。

Foresight Stereoとは ― 1ショットで4出力

Foresight Stereo は、TOMOMI RESEARCHのステレオ3Dイメージング技術です。最大の特長は、1回の撮像から4種類の出力を同時に生成すること。

  1. ライブ画像 ― 人の目に見えるそのままの見た目
  2. 2Dテクスチャ ― 表面の「色・模様」だけを取り出したレイヤー
  3. 3Dサーフェス ― 表面の「形(凹凸)」だけを復元したレイヤー
  4. サーフェスノーマル ― 表面の「向き」を符号化した中間データ

撮り直しや別工程を重ねるのではなく、1ショットで「色のレイヤー」と「形のレイヤー」を分けて並べられる――この同時性が、検査現場のスループットに直結します。では、実際に4つの出力を順に見ていきましょう。

① ライブ画像 ― 色も形も混ざった「出発点」

最初は ライブ画像。人の目で見たままの状態です(冒頭の画像)。

銅色に輝く基板の上に、格子状のユニットが整然と並びます。各ユニットの中は、無数の小さなバンプが規則正しく敷き詰められた「バンプの海」。ところが画面のあちこちには、茶色いシミ状の変色も見えます。ここでは「色」と「形」がひとつの絵の中に溶け合っています。あのシミは表面の汚れ・変色なのか、それともバンプがつぶれて影になっているのか――人の目には判然としません。この「混ざった状態」が、これから分離していく出発点です。

② 2Dテクスチャ ― 色(アルベド)だけを残す

次は 2Dテクスチャ。色だけを抜き出したレイヤーです。

Foresight Stereoの2Dテクスチャ出力。陰影を除去し色・模様(アルベド)だけを抽出したグレースケール画像。バンプの並びとシミ状の濃淡がフラットに読める
Foresight Stereoの2Dテクスチャ出力。陰影を除去し色・模様(アルベド)だけを抽出したグレースケール画像。バンプの並びとシミ状の濃淡がフラットに読める

照明による陰影やハイライトが取り除かれ、バンプの並びや変色のムラがフラットで均一な明るさで読めるようになりました。ここで取り出しているのは、専門的には アルベド(素材そのものが本来持つ色・反射率) ― つまり「照明や凹凸の影に邪魔されない、素材の地の色・模様」です。

  • 残しているもの: 変色・シミ・汚れといった表面の色情報
  • 捨てているもの: 凹凸が作る影やハイライト

凹凸の影に惑わされずに色ムラだけを評価できるため、酸化・変色・汚れ・異物の付着といった「色側」の不良を見るのに向いています。先ほどライブで気になったシミ状の濃淡も、ここでは純粋な「色の模様」として残っています。

③ 3Dサーフェス ― 色を捨て、バンプの形だけを残す(本記事のハイライト)

そして今回の主役、3Dサーフェスです。

Foresight Stereoで復元した3Dサーフェス。色とシミが消え、各バンプが規則正しい突起の海として立ち上がり、L字状の配線トレースやセル境界の段差まで凹凸として浮かび上がる
Foresight Stereoで復元した3Dサーフェス。色とシミが消え、各バンプが規則正しい突起の海として立ち上がり、L字状の配線トレースやセル境界の段差まで凹凸として浮かび上がる

色がすべて消え、レリーフ(浮き彫り)のように凹凸だけが浮かび上がりました。先ほどまで目立っていた茶色いシミは、ここではほぼ消えています。これは決定的な手がかりです ―― シミが消えるということは、それが「形ではない=表面の変色・汚れ」だと分かるからです。

  • バンプの海 ― 各ユニット内のバンプが、規則正しい突起として一斉に立ち上がります。一つひとつの高さや丸みの違い、欠け・つぶれの手がかりが読めます。
  • 配線トレース ― ライブでは目立たなかったセル内のL字状の配線ラインが、微細な凹凸として顕在化します。
  • セル境界の段差 ― ダイシングストリートに沿った区画の段差が、なめらかな起伏として立ち上がります。

ここで起きているのは、「平らな面に乗っているだけの色は、形として存在しないから消える」ということです。シミの色は3Dサーフェスには現れず、残るのは物理的に表面が変形している部分だけ。つまりForesight Stereoは「何色が乗っているか」を取り除き、「どんな形をしているか」だけを純粋に取り出しているのです。これは、バンプの欠損・つぶれ・高さばらつきといった形状側の手がかりを見るための視点です。バンプの高さが揃っているか(コプラナリティ=バンプ高さの揃い)を読む足がかりにもなります。

④ サーフェスノーマル ― 表面の「向き」を色で表す

最後は サーフェスノーマル。3Dサーフェスを復元する元になった中間データです。

Foresight Stereoのサーフェスノーマル出力。各画素の表面の向きを色で符号化した法線マップ。全体は上向きの青で、各バンプ位置に向きの変化が点在する
Foresight Stereoのサーフェスノーマル出力。各画素の表面の向きを色で符号化した法線マップ。全体は上向きの青で、各バンプ位置に向きの変化が点在する

全体が青系に発光したような、独特のマップになっています。これは サーフェスノーマル(表面の法線=各画素の表面が向いている方向) を色で符号化したものです。「法線」とは、その点の表面がどちらを向いているかを示す矢印のようなもので、面の傾きが変わる場所=エッジやバンプの立ち上がりで色が変化します。

この画像では、平らな基板面が一様な青(真上を向いている)として表れ、その中に各バンプの位置で向きが変化した点が規則正しく点在しています。微小な凹凸やエッジの立ち上がりに鋭敏なため、3Dサーフェス復元の土台となるだけでなく、バンプ一つひとつの立ち上がりや、わずかな段差・欠けの手がかりを読む生データとしても機能します。

検査現場での意味 ― 「色か、形か」を切り分ける

4つの出力を並べて見ると、Foresight Stereoがバンプ検査の現場にもたらす価値が見えてきます。

  • 変色と欠損を切り分ける ― 2Dテクスチャ(色)と3Dサーフェス(形)を分けて見ることで、「これは変色・汚れ(テクスチャ欠陥)なのか、それともバンプの欠損・つぶれ(形状欠陥)なのか」を1ショットで切り分けられます。
  • 高反射素材に強い ― 銅・はんだのように反射が強く、通常のカメラでは照明の映り込みにバンプが紛れてしまう素材でも、形(凹凸)として捉えられます。
  • バンプの形・高さばらつきを観察 ― 突起の海として立ち上がるため、欠け・つぶれ・高さの不揃いの手がかりや、コプラナリティ(バンプ高さの揃い)を読む足がかりが得られます。
  • 1ショットで完結 ― 4つの視点を別々に撮り直すのではなく、1回の撮像で同時に得られるため、検査のスループットを落としません。

なお、今回はあくまで1サンプルの観察デモであり、あらゆる素材・あらゆる欠陥への性能を保証するものではありません。それでも、「色と形を分けて見る」という発想が、混ざり合って反射の強いバンプアレイの検査をどう変えうるかは、4枚の画像が雄弁に物語っています。

まとめ

  • Foresight Stereo は、1回の撮像からライブ画像・2Dテクスチャ(色)・3Dサーフェス(形)・サーフェスノーマル(向き)の4出力を同時生成するステレオ3Dイメージング技術です。
  • 半導体のバンプアレイでは、2Dテクスチャに変色などの色情報が残り、3Dサーフェスでは色(シミ)が消えて各バンプの突起だけが浮かび上がりました。 人の目では混ざる「色」と「形」を、別レイヤーに分離できます。
  • 色と形を分離できることは、変色と欠損の切り分け・高反射素材の検査・バンプの高さばらつき(コプラナリティ)の観察といった現場課題に直結します。